アイデアが向こうからやってくる状態

クリエイターであれば、アイデアを生み出すときの自分なりの方法論があると思います。

それは自分の中から生まれてくるアイデアもあるでしょうが、「アイデアが向こうからやってくる状態」という経験もあるのではなかろうかと思います。

「アイデアが向こうからやってくる状態」は、たぶん頭に知識が満載されていてたくさんの情報を処理しなくてはならない状態では訪れないと思います。

一流アスリートが試合中に「ゾーンに入る」という表現をします。テニスであればどこに打っても見事にウィナーが決まるとか、一試合にバッターが連続ホームランとか、驚異的なラップタイムを出すとか、「何をやってもうまくいく」状態のことを言うそうです。
これは「集中力が高い状態」と言われることもありますが、どちらかというと、これは「大脳を使っていない状態」とも考えられるそうです。

大脳を使わないから、大脳を経由しないので、手や足の情報を伝える神経の伝達の速度が早くなるから、というのがその理由です。

おそらくそれはコンマ何秒という差なんでしょうけど、一流アスリートたちの戦いにおけるコンマ何秒という差は、それはそれは大きな差となっているはずです。

さて、我々はその世界に生きているわけではないですが、でも、そういう似たような「何をやってもうまくいく」ゾーン状態を作り出すことはできそうです。

大脳を使わない。

これが、いま僕が想定する「アイデアが向こうからやってくる状態」ではなかろうかと思っています。

デヴィッド・リンチ監督はあの名作「マルホランド・ドライブ」を制作しているとき、この難解でぐちゃぐちゃな物語をどうやって終わらせようかと考えていたときに、瞑想をしていたら、アイデアがやってきたそうです。

アイルトン・セナは、鈴鹿サーキットで驚異的なラップタイムを出したとき、スプーンコーナーで「神を見た」と真顔で語っていました。

まあ、リンチは瞑想が好きだから、とか、セナは信心深いから、と思えますが、とはいえ、「大脳を使わない」という行為がもたらしたと考えるとそれは神秘ではなく科学的に説明ができそうです。

常に意識を休ませておく。知識や過去の成功体験を忘れる。ぼーっとする。

などいろいろな方法があるでしょうけど、何も考えないでいるという技術はなかなか難しいものですね。とくに中年になればなるほど難しい。知恵も経験も法則も知っている。成功も失敗も経験している。いい思い出もいやな思い出も蓄積されているのですから。

だからこそ、「大脳を使わない」という技術に挑む価値があるのかと思っております。

で、僕が「大脳を使っていない状態」は、たいていそれは、一服しているときだと思います。